Style: Chapter 3 Cohesion

3章 Cohesion(結束構造)は、文と文の間の結合について述べます。2章は主語と述語の選択によって文章を明快にする方法についてでしたが、3章では一つ粒度のレベルが上がって、文と文をいかにスムースにつなぐかという点に注目します。

3章では「情報の流れを管理する」という節があります。多くの英作文の参考書では「受身の文は書くな」と繰り返し書かれていますが、ある文脈の中で能動態・受動態のどちらを選択すべきかということが書かれた本は少ないと思います*1。次のブラックフォールの例文は私のお気に入りです。

(1) Some astonishing*2 questions about the nature of the universe have been raised by scientists exploring the nature of black holes in space. (2) A black hole is crated by the collapse*3 of a dead star into a point perhaps no larger than a marble*4. (3) So much matter*5 compressed into so little volume changes the fabric*6 of space around it in profoundly*7 puzzling ways.

受身がいけないという教えに従えば(2)は次のようになります。

The collapse of a dead start into a point perhaps no larger than a marble creates a black hole.

しかし、このように能動態にすると(1)の最後に現れたblack holesと(3)のa black holeの間の距離が広がって、文と文とのつながりが悪くなります。読者は(3)の文の最後に来て、初めて(2)とのつながりを理解できるからです。(2)の元々の文を注意深く見てください。(2)の最後は、さらに(3)の導入につながっています。このように、(1)->(2)->(3)という文の流れは、前の情報を引き継ぐ形で展開されていきます。

この章では次の重要な原則を示しています。

原則1 古い情報を前に:
Put a the beginning of a sentence those ideas that you have already mentioned, referred to, or implied, or concepts that you can reasonably assume your reader is already familiar with, and will readily recognize.

原則2 新しい情報を後に:
Put at the end of your sentence the newest, the most surprising, the most significant information: information that you want to stress -- perhaps the information that you will expand on in your next sentence.

文章は文の集まりから構成されますから、ある文は前の文に新たな情報を追加する形で展開されていきます。読者にとって既知の情報から文を開始させれば、新しい考えをスムースに展開することができます。上の(2)は著者の視点が受身文の主語であるblack holeにあって、しかも読者にとって(1)で導入された既知の情報です。ですから、この著者の視点と文脈においては受身の方が適切です。以上の例からわかるように、単文だけを見て受身の文の是非を論じてもあまり意味はないのです。

では、文と文の接続だけ注意していれば十分かといえば、もちろん十分ではありません。文章全体の一貫性については4章のEmphasis(強調)の後の5、6章Coherence(結束性)で述べられます。

つづく(ただし不定期)。

*1:理科系のための英文作法」はこのことを理路整然と説明しています

*2:驚くばかりの

*3:崩壊

*4:ビー玉、小石

*5:物質

*6:構造

*7:深く